住職法話

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2022.08.13 お盆
安倍晋三元総理のご冥福を願い

瑞法光寺 安倍晋三
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近年、コロナ禍やウクライナ問題など驚くことが沢山ありましたが、今回の事件もそれに並ぶくらい私としては衝撃でした。このようなことが今の日本で起こるのかと。この事件でメディアを騒がせている旧統一教会や政教分離の問題など私として思うことは多々あるのですが、まずは今回の事件で命を落とされた安倍晋三元総理のご冥福を願いたいと思います。

人それぞれ考えはあるでしょうし、私自身は熱烈な自民党員というわけではありませんが、戦後最長の日本の総理であり、精力的に選挙活動をしている最中に銃撃されて亡くなるという突然の訃報は私個人としては残念に思うことが多いです。そしてそれは亡くなられた安倍元総理当人にとっても同じでしょう。突然だったこともあり、本人・周囲の者もさぞ心残りなどの未練があろうかと思います。そういった時こそ、ぜひ丁寧に供養すべきだと仏教者としては思うのです。人は皆、この世で生き抜き、徳を積んだ後は黄泉路を進み、お裁きを経て仏になるのだと言われていおり、葬儀では故人の生前の徳を讃え、諸仏諸天善神へと報告し、黄泉路での引導を願うのが大切なことだと言われております。だからこそ、今回は安倍元総理の功績を私なりに振り返ってみたいと思います。

ただ、多くはメディアなどで取り上げている通りですので、私が確かにと思った一部を今回はご紹介したいと思います。私が好きなジャーナリストの一人として田崎史郎氏がいらっしゃいます。安倍元総理と親交が深く、「政権担当者がどう考えているのかを伝えることが仕事」という意図でかなりわかりやすく政策を解説して下さる為です。その田崎氏が事件後にニュース番組で安倍元総理のことを振返り、とても印象深い演説が真珠湾における追悼演説だと発言していました。前提として「真珠湾」「パールハーバー」とはアメリカで「アメリカ合衆国にとって恥辱の日」とされる第二次世界大戦の始まりの場所・日時であり、現代においても反日感情が高まる日とされています。そして安倍総理は就任当時、「強硬派」「主戦派」の総理として見られアメリカから警戒されていたそうです。しかし、この真珠湾における演説をしてからは見方が変わり、当時のオバマ大統領、そして全くタイプが違う次のトランプ大統領の時も対立せず、一層交流を深めて日米同盟はかつてないほど強固になったと言われています。そういう意味では田崎さんは「ひとつの分岐点だった」と紹介されていました。

私もニュースなどで安倍総理の真珠湾追悼訪問のニュースは聞いていたのですが、演説全文までは読んだことがなかったのでこれを機に読んでみました。裏のページにスペースの関係上、演説の一部を抜粋させて頂きました。まだ、ネット上には演説全文が何個か残されていますので皆様も興味があれば全文をご覧ください。ここには現在のウクライナ問題や台湾問題にも通じることも書いてありますし、まるでこれからの未来も予言したような文章だなと思いました。私としてはこのような演説をして世界の信用を勝ち取り、現在に繋がる国防や政策の一助を担って頂いた安倍元総理に改めてご冥福を願いたいと思います。

〇安倍総理の真珠湾での演説『日本経済新聞』より抜粋。
オバマ大統領、ハリス司令官、ご列席の皆さま、そして、すべての、アメリカ国民の皆さま。パールハーバー真珠湾に、いま私は日本国総理大臣として立っています。(中略)あの日、爆撃が戦艦アリゾナを2つに切り裂いたとき、紅蓮(ぐれん)の炎の中で死んでいった。75年がたったいまも、海底に横たわるアリゾナには、数知れぬ兵士たちが眠っています。耳を澄まして心を研ぎ澄ますと、風と波の音とともに、兵士たちの声が聞こえてきます(中略)。そのみ霊よ、安らかなれ――。思いを込め、私は日本国民を代表して、兵士たちが眠る海に花を投じました。

オバマ大統領、アメリカ国民の皆さん、世界のさまざまな国の皆さん。私は日本国総理大臣として、この地で命を落とした人々のみ霊に、ここから始まった戦いが奪ったすべての勇者たちの命に、戦争の犠牲となった数知れぬ無辜(むこ)の民の魂に、永劫(えいごう)の哀悼の誠をささげます。戦争の惨禍は二度と繰り返してはならない。私たちは、そう誓いました。そして戦後、自由で民主的な国を創り上げ、法の支配を重んじ、ひたすら不戦の誓いを貫いてまいりました。戦後70年間に及ぶ平和国家としての歩みに、私たち日本人は、静かな誇りを感じながら、この不動の方針をこれからも貫いてまいります。(中略)オバマ大統領とともに訪れた、ワシントンのリンカーン・メモリアル。その壁に刻まれた言葉が私の心に去来します。 「誰に対しても、悪意を抱かず、慈悲の心で向き合う」。 「永続する平和を、われわれすべてのあいだに打ち立て、大切に守る任務をやりとげる」。 エイブラハム・リンカーン大統領の言葉です。私は日本国民を代表し、米国が、世界が、日本に示してくれた寛容に、改めてここに、心からの感謝を申し上げます。

あの「パールハーバー」から75年。歴史に残る激しい戦争を戦った日本と米国は、歴史にまれな、深く強く結ばれた同盟国となりました。それは、いままでにもまして、世界を覆う幾多の困難に、ともに立ち向かう同盟です。明日を拓く、「希望の同盟」です。 私たちを結びつけたものは、寛容の心がもたらした、the power of reconciliation、「和解の力」です。私がここパールハーバーで、オバマ大統領とともに、世界の人々に対して訴えたいもの。それは、この和解の力です。 戦争の惨禍は、いまだ世界から消えない。憎悪が憎悪を招く連鎖は、なくなろうとしない。寛容の心、和解の力を、世界はいま、いまこそ必要としています。憎悪を消し去り、共通の価値のもと、友情と信頼を育てた日米は、いま、いまこそ寛容の大切さと、和解の力を世界に向かって訴え続けていく任務を帯びています。日本と米国の同盟は、だからこそ「希望の同盟」なのです。(中略)パールハーバーを和解の象徴として記憶し続けてくれることを私は願います。そのための努力を、私たちはこれからも惜しみなく続けていく。オバマ大統領とともに、ここに、固く誓います。ありがとうございました。


2022.03.21 春彼岸
ウクライナ問題、収束を願い


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ウクライナ問題が日々ニュースで報じられています。当初、私もロシアは本格的な侵略戦争はしないだろうと思っていましたが予想に反して進軍しました。その結果、ウクライナ・ロシア双方に死傷者が多数出ており、多くの難民も出ています。こういった悲しい事態は何とか収束して欲しいと願うばかりです。この侵略戦争(自己防衛などは除外)というのは仏教においてどういうものでしょうか。前提として仏教ではこの世の中に対して次のような考え方を持っています。

〇諸法無我・・・この世は因果(原因と結果)の積み重ねによってできている
〇一切皆苦・・・この世は生老病死などを含めて苦しみ悩みの多い世界
〇悪因を結べば悪果を招くことになる為、十悪(殺人・誹謗中傷・貪り・憎しみ・邪見、など)といった悪因を結ぶ悪行を戒める教えがある。
〇世界は大別すると十界に分かれており、地獄界(苦しみに満ちている)・餓鬼界(飢え貪りあう)・畜生界(理性なく、弱肉強食)・修羅界(嫉妬、卑屈の心を抱えた競争)・人界・天界・声聞界・縁覚界・菩薩界・仏界がある。

 このような前提を持って考えれば侵略戦争とは人を殺し、憎しみが生まれ、大量の悪因を結び、長きに渡り大きな悪果を招く、大きな「悪行」の一つだと思います。例えばこの戦争が収束したとして、今後、長期に渡りウクライナはロシアを敵視するでしょう。家族、祖国を蹂躙された憎しみからゲリラ戦や反対運動が行われ、更に多くの悪因・悪果が結ばれる悪循環を繰り返していく、まさに「地獄の場所」となります。これは例えでなく、本当に地獄が顕れるという意味です。仏教では先ほどあげた十界は互いに重なっているのだといわれます。例えばこの人の世は基本的には「人界」です。

しかし、その「人界」の中にも、例えば各お寺の本堂や墓地、各自宅の仏壇などは皆が供養や感謝の心を持って、何度もお参りすることで仏となった故人らのいる「仏界に近い場所」、安らぐ場所になっていくのだと言われています。逆に今回の戦争のような苦しみが更なる苦しみを生むような「地獄のような場所」もあります。仏教の最終的な目標は皆の成仏、つまりはこの「人界」に生きる我らが少しでも皆が支え合い助け合う安心の世界、「仏界」へと近づくことです。これは本当に果てしない目標でしょう。ただ、世界は少しずつですが第二次世界大戦以降、その方向に進んでいました。例えば国連は本来、「国際の平和と安全を維持すること。諸国間の友好関係を発展させること。」を目標としています。今は実質的に機能しなくなっているのが残念ですが、改善をした上でいずれ必要になる時が来ると思っています。

かつては日本も戦争をしました。日本が一方的に悪かったか、当時を生きていない私にはわかりません。ただその後、戦争により日本は沢山の悪因を結んでしまいました。それは現代でもなお残っていますが、日本は争った国々と和解し何とか結んでしまった悪因を無くそうと努力してきたと思います。国としては各国で賠償を進めてきましたし、好意により賠償を求めないという国もありましたが、将来的に良い関係を築く為に無償供与という形で何かしらの助成を行いました。民間でもビジネスやスポーツ、文化など様々な方面で融和の努力が続けられました。こういった努力の結果、ほとんどの国とは友好的な関係を築き、良因を結び直してきました。日本人が海外に行くとき、世界の中でもパスポートの信頼度がトップクラスだと言われるのはその一つの成果でしょう。ただ、終戦からおよそ77年が経ちますが、まだこの問題に対して韓国などと揉めているように完全に解決したわけではありません。戦争の悪因を絶つためには様々な努力が長い時間必要になるのだと思います。

 今後ウクライナ問題でもそういった大小様々な努力が必要な中で、現地に対するニュースを見ているとアナウンサーの方が「我々は何もできないですが・・・」という枕詞を言うことがあります。しかし、それは違うと思います。最初に書いたようにこの世は因果によって成り立つと仏教では考えています。そして因果とはいくつもいくつも連鎖して複雑に、広大に絡み合っているものだと思います。そして今回のウクライナ問題も数多くの因果を経由して我々と繋がっています。これから起こってくると言われている物価上昇やニュースを見た人々が次々と反戦の声などを上げているのもその証拠です。ならばこそ、我々の行動はウクライナ問題へ小さいものでしょうが影響します。例えば今年、東日本大震災より11年が経ちました。まだ、復興途上とはいえニュースなどで流れているように、震災直後から比べるとだいぶ復興してきました。その復興を支えたのは地域の方々は勿論ですが政府の復興財源も一因です。そして復興財源の4割は我々の所得税や住民税、ガソリン税を増額するという形で確保されています。我々は東日本大震災の復興に何ができたか、と疑問に思う方もいるかもしれませんが日々健全に社会生活を送ることで立派に復興の一助になっているのです。規模や状況は違いますがウクライナ問題も我々と地続きの話です。

仏教に説かれるような善行を積むこと、例えば我々が正しい見識(正見)を持ち、日常を健全に過ごし(精進)、良因を重ねていくことはとても大切なことなのです。例えば収束した後のウクライナの復興支援、分断が進む世界各国の融和政策、どれも我々が選挙や経済活動などで日本が健全な国家であり続けないと支えることはできないことでしょう。すぐには難しいかもしれませんが、我々の日常がいずれはウクライナ問題などを解決する一助になると思っています。


2022.01.01 新年
コロナから前に進む


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コロナの収束が未だに見えないですが、昨年の令和3年とはだいぶ状況が変わったように思います。昨年のお正月はこんな状況でした。
・コロナが日本で流行り始めて丁度一年
・日本の新規感染者は全国で一日3000人を超えて緊急事態宣言がでる
・2月からワクチンを打ち始めたが供給が追い付かない
など皆様も随分不安や苛立ちがあったのではないかと思います。

あれから一年、新しい株が出てくるなどまだ色々とありますが、昨年ほどの焦りや不安はないかと思います。それは我々がコロナと向き合い続けて、ワクチンを始めとした対策を続けてきた成果だと思います。例えば政府は色々と失策もありましたが、ワクチンを必要数しっかりと確保しましたし、今回オミクロン株が出たと言われた時に早めに水際対策を講じました。また、我々もある程度の感染者がでれば、まん延防止などの規制が掛かり、より一層気を付けなくてはいけないのだという心構えができています。これはコロナが「正体不明のウィルス」ではなく、色々と対処に追われながら苦労し、こうすれば良いのではということが明らかになってきたからこそ、昨年に比べれば不安や苛立ちも減ったのだと思います。

仏教では悩み苦しみを超えて悟りという安心の境地に近づくためには「蓮の功徳」が必要だと言われています。何種類かあるのですが、私はその中でも「泥中蓮華」(苦労という泥を糧として蓮は泥にまみれることなく大輪の華を咲かせる)という功徳が一番好きで、うちのお寺の御朱印にもしております。このコロナにおいて少しずつ色々な苦労や経験を積み重ねて不安や苛立ちなどの気持ちを無くしていく、それは仏教に説かれた善い行いであり、実はコロナ以外でも至る所に見ることができます。

皆様は野球で活躍された野村克也監督をご存知かと思います。惜しくも令和2年にお亡くなりになりました。丁度コロナが流行っていたこともあり、延期されていた偲ぶ会が令和3年の12月に行われ多くの関係者やファンが参列されたとのニュースもありました。その野村監督、現役時代に捕手をしながら三冠王獲得や監督としても名将と称えられる方ですが、実はプロ入り前後はそこまで戦績は良くなかったようです。高校時代は甲子園にはでれず予選敗退、その後に入団テストを受けて南海にプロ入りします。ただ、出場機会が貰えず、さらにカーブが打てないなどの理由から成績も振るわず戦力外通告を受けたこともあったそうです。その後、肩の強化や相手ピッチャーのカーブを投げるときに出る「くせ」を研究することにより、徐々に成績を上げる中で「考えることの重要性」を認識したそうです。そして同僚のドン・ブレイザー氏の教え「シンキング・ベースボール」などもあり、後の監督時代に経験や勘ではなく、データ分析による野球、ID野球を提唱します。そしてそれは日本の野球界に革命を起こし、偲ぶ会に来ていた関係者の方々を始め現在も広く使われています。これも苦労を糧とした一つの泥中蓮華の形だと思います。

ここまで大きいことでなくても、皆様の日常でこういう失敗をしたから次はこれに気を付けよう、こういう工夫をすれば次はもっと良くなるなどということはなかったでしょうか。余り実感はないかもしれませんが、よくよく探してみればきっと皆様も泥中蓮華の功徳を積んでいると思いますし、それは常に変わりゆくこの世にて、より良い方向に向かう為にとても大切なことです。だからこそ、今回のコロナ禍においても我々としてはただ、流されるまま、止まったままではいけないと思っています。それでは泥の中に埋まってしまうのです。お寺としても様々な工夫をしてきたつもりです。行事関連もそうですが、他にも昨年末にお配りした檀信徒さんが運営する事務所のチラシはなかなか縁を結びづらくなったお寺と檀信徒さんを少しでも繋ぎ直そうとする一環です。また、昨年まで毎月有料で行っていた「月例会」をもっと皆さんに気軽にきて貰えるようにと、今年は毎月の「祈願会」として無料で行っていきます。これもお寺に足を運ぶ機会の増加、また、心配事や願い事がある時に申し込みなしで気軽に参加できるような会を作りたいという想いから変更致しました。

皆様もこのコロナで辞めたこと、続けたことなどを通じて改めて気づいたことが様々あるかと思います。どうぞ、泥中蓮華の功徳を積むためにもその気づきを大切にして下さい。それはきっと皆様の安心へと繋がっていきます。ぜひ、今年もより良い方へ進んでいきましょう。


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